NC機 それとも汎用機    続き

NC機は段取り時間がかかる? 汎用機の方が段取りが早い!? 

汎用機機の場合は、工具を取り付ければすぐに加工に入れる、しかしNC機の場合は「プログ
ラムの作成」→「工具を取り付ける」→「工具オフセット」→「原点設定」→「干渉チェック」→「加
工」といった具合に、汎用機に比べると、NC機の場合はとてつもなく段取り手順が多い様に
感じる、ここに一つの落とし穴があって、単純に考えると、多品種少ロット品や低付加価値商
品に関しては「やっぱり汎用機かな〜」、なんて考えに陥ってしまう。そんな考えに陥る前に一
つずつ整理して、罠に陥らないようにしよう。


まずは、「プログラムの作成」だ。
「オ−クマ」、「森精機」、「マザック」の3大機械メーカーでは、「対話型自動プロ」なるものが付い
ていて、NCプログラムの作成が非常に早い、図面の寸法を入力するだけで、加工プログラムや
被削材に応じて切り込み量や、送り、切削速度などを全部加味してNCプログラムを出力してくれ
る(編集は必要)おまけに3Dのシュミレーション付きだ。こんな機能は汎用機には全くありえない
シュミレーションをすれば、おおよその加工状況や完成品の状態を確認することが出来る。但し
「オ−クマ」、「森精機」、「マザック」以外の機械メーカーでは「対話型自動プロ」なるものはない
ので、自分で図面を見ながらプログラムしていくことになる。
NCプログラムの作成は簡単
加工シュミレーション


次は、「工具を取り付ける」
「工具を取り付ける」なんて言ったけど、結局なにもしないことも多い。「なんで〜」と、おっしゃ
るのも当然だ、けどそれが当たり前だ、下の写真を見てみよう。

外径と端面の荒加工工具 
この工具はいつも使うため
機械購入後一度もはずした
ことが無い。


クロス側のエンドミル。この
工具もよく使うため めった
にはずさない。

    刃物台の全体画像     

上の画像のような、常時付けっぱなしの工具は沢山ある、よってNC機の場合は工具を取り付
る時間は汎用機とは比べ物にならない程短い。


「工具オフセット」
「工具オフセット」について。工具オフセットとは現在取り付けてある工具の位置を、機械のコ
ンピューターに読み込ませること。やることはいたって簡単、工具をセンサーに「チョン」と当
てるだけ。誤差は機種によってまちまちだが、名のとーったメーカーのものなら、±0.01以
内の誤差だ、但し加工すると当然、材料剛性や工具剛性等の問題があるので、そのまま
加工しても必ず誤差は生じる。但しこの装置があるのと無いのとでは天と地の差だ。下に
実際の画像を掲載しておく。


「タッチセッター」に外径仕上
げ加工の工具を当てている
画像、これで、機械はこの
工具の位置を認識する。

寸法精度が厳しくないワークなら、これだけですぐに加工をスタートさせることが出来る。こん
なことは汎用機には、「全く」と言っていいほどありえない。


「原点設定」
材料には、必ずと言っていいほど、余分な取り代が付いている、この余分な取り代を機械に
読み込ませる必要がある、といってもNC機の場合はいたって簡単、材料の端面に基準バイ
トなるものを、またもや「チョン」と当てるだけ。下の画像はその様子。

ワークを回転させて、基準
バイトを当てている様子。こ
の場合、仕上げしろが約1_
あるので、機械には取りし
ろが、「1_」と入力する。


この動作だけで、精度の要求されていない物なら、すぐに加工ができる。これもNC機ならで
はのことだ。汎用機なら一度長めに加工して、要求の寸法まで追い込んでいくことになる。


「干渉チェック」 
NC機の場合は、加工の前に入念に「干渉チェックを行う必要がある」とよく言われる、それも
そのはず、最近のNC機はとにかくタレットの早送り速度が早い、しかも移動トルクも強力だ、
そのタレットがまともにどこかにぶつかったらただではすまない。そのため「干渉チェックを行
う必要がある」というのだ。ただ残念ながらそんなことは全くと言っていいほど必要ない。オペ
レーターは自分の使用している機械について、どこでどんな風にぶつかるのか熟知している
ぶつかりそうなところだけ「チョロット」見てあげればよい。
ということで「干渉チェック」なるものは、基本的に無い。


「加工」
「加工」に関してはいうまでもない、NC機は汎用機の10倍から200倍以上の生産速度が
ある。
1.NC機は汎用機の数倍から数十倍の回転数で加工する。
2.NC機はワンチャックで複数の工程を同時に加工する。これで数倍から数十倍の差が出る
3.NC機は汎用機と違いボタンを押せば強制的に加工を開始する、それに対して汎用機は
 人間の体調に左右される、特にサボり癖のある人間が扱うと全く利益が出ない。
4.NC機は寸法精度が汎用機に比べるとはるかに勝っているので、歩留まり率が良い。
5.冬場ウエットの加工では、NC機なら問題ないが、汎用機では1分加工したら5分休んで
 冷たい水で冷やされた手を温める。こんなことでは当然ながら利益など期待できない。
6.NC機は加工中に、他の作業が出来る、汎用機では殆ど不可能。 

汎用機の場合のウェット加工では、
冬季には容赦なく冷たい切削油
剤が手にかかる、1分加工したら
5分の休憩だ。NC機ではありえ
ない。 安い仕事なら全くの赤だ。

NC機の加工中に、フライス加工を
した部分のバリ取り作業をしている
画像。汎用機では、このような作業
は殆ど不可能。低単価の仕事は
このようにして少しでも利益率をあ
げる。



こと「加工」に関して、NC機と汎用機を比較するなら、ホームページのサーバーの容量がい
くらあっても掲載不可能だ、キリコの問題、自動給油、刃もちの問題、面粗度などなどちょっ
と思い浮かんだだけでも山のように出てくるので「加工」に関してはもうこれで終了。


ここで、質問します。(答えは自由です)

低付加価値商品の加工は、NC機それとも汎用機、
どちらが向いていますか?